かぎ針編みでは、段の編みはじめで〝立ち上がりのくさり〟と呼ばれるくさり編みをします。
立ち上がりのくさりを何目編むかは、作品によって異なり、その目数は編み目の高さにも関係しています。
かぎ針編みの基本的な編み目の高さをくさりの目数で測るとすると、こま編みであればくさり1目分の高さで、中長編みは2目分、長編みは3目分、といった目安があります。
例えば、すべて長編みで編む場合、段の編みはじめは、突然高さのある長編みから編みはじめることはできません。そこで、長編みの高さと同じになるくさり3目を編んでから、長編みを編みはじめます。
このとき最初に編むくさりが〝立ち上がりのくさり〟です。
では、かぎ針編みの基本的な編み方と立ち上がりのくさりについて、編み図と実際の編み地を見ながら解説していきます。
Index -目次-
長編みの立ち上がりのくさり
まずは、立ち上がりのくさりが一番分かりやすい長編みの往復編みから見てみます。
こちらが、長編みの往復編みを表した編み図の例です。
太線記号が、立ち上がりのくさりになります。
編み図で見ると、立ち上がりのくさり3目が、次の長編みの目と同じ高さになっていることが分かります。
長編みの場合は「立ち上がりのくさり3目=長編み1目」とみなします。
よって、1段目の右端にある、縦に並んだくさり3目(立ち上がりのくさり)が長編み1目の代わりになります。
1段目の立ち上がりのくさりは、作り目のくさりにつづけて編んでいるので、最初の長編みは、針に近いほうから5番目のくさり目に編み入れることになります。
2段目のくさりは、1段目最後の目を編み終えたあとに、つづけて編みます。
実際の編み地を見ると、ラインで示した箇所が立ち上がりのくさりになります。
次に、長編みの輪編みを見てみましょう。
輪編みの場合も、段の編みはじめでは立ち上がりのくさり3目を編みます。
ここでも、「立ち上がりのくさり3目=長編み1目」とみなしています。
2段目は、前段のすべての目に長編みを2目ずつ編み入れる、という編み図になっています。
編みはじめでは、立ち上がりのくさりと長編み1目を編んでいることからも、立ち上がりのくさりが長編み1目と扱われていることが分かります。
実際の編み地では、次のようになります。
2段目最後の引き抜き編みをする直前の状態です。
ラインで示したところが、立ち上がりのくさり3目です。
中長編みの立ち上がりのくさり
次に、中長編みを見ていきます。
中長編みの目は、くさり2目分の高さなので、中長編みの場合は立ち上がりのくさりを2目編みます。
中長編みも、長編みのときと同様に「立ち上がりのくさり2目=中長編み1目」とみなされます。
編み図を見ても、長編みと同様に、1段目の右端にある立ち上がりのくさり2目が、中長編み1目として扱われています。
作り目のくさりにつづけて、立ち上がりのくさり2目を編み、最初の中長編みの目は、かぎ針に近いほうから4番目のくさり目に編み入れます。
編み地で見るとこのようになります。
では、中長編みの輪編みの場合を見てみましょう。
こちらも長編みと同様で、2段目を見ると、立ち上がりのくさりが中長編み1目として扱われているのが分かります。
編み地は下のようになります。
こま編みの立ち上がりのくさり
では最後に、こま編みを見ていきましょう。
こま編みはくさり1目分の高さなので、立ち上がりのくさりも1目となりますが、長編みや中長編みと違う点があります。
こま編みの往復編みの編み図例を見てみましょう。
作り目のくさりにつづけて立ち上がりのくさりを編むところまでは、長編みや中長編みと同じなのですが、編み図を見るとどこか違いませんか?
1段目の最初の目が、長編みや中長編みのときと違うことが分かるでしょうか。
こま編みの場合のみ、「立ち上がりのくさり1目=こま編み1目」とみなされない、という違いがあります。
よって、立ち上がりのくさり1目と、1目めのこま編みがセットで、その段の最初の目となります。
実際の編み地では、ラインの位置に立ち上がりのくさり1目があります。
では、次にこま編みの輪編みの場合を見てみましょう。
ここでも、2段目は前段のすべての目にこま編み2目ずつ編み入れる、という編み図になっています。
立ち上がりのくさりのところに、こま編み2目を編み入れる記号になっていることからも、立ち上がりのくさりはこま編み1目として扱われていないことが分かります。
実際の編み地では、ラインの位置に立ち上がりのくさり1目があります。
こま編みで、立ち上がりのくさりを編まないという例外
〝立ち上がりのくさり〟は、ここまでに説明してきたようなルールで使われることが一般的です。
例外的に、こま編みだけ、立ち上がりのくさりを編まない、という方法で編むこともできるので、補足的にご説明します。
さっそく実際の画像でご説明しますが、下の2つの編み地は、2段目の編み方に違いがあります。
右は立ち上がりのくさり1目を編んで編みはじめ、2段目最後の引き抜き編みをする直前の編み地。左は立ち上がりのくさりを編まずに1周した編み地です。
矢印は編みはじめの目を指しており、ラインは立ち上がりのくさりを示しています。
右の編み地は、立ち上がりのくさりを編んでいるため、段のはじまり(1目め)に高さがあり、くっきりとしています。そして、この段の最後の目と高さが揃っています。
立ち上がりのくさりを編むことで、その段の編みはじめの目が分かりやすくなり、最後の目を編んだあとに引き抜き編みをすると、最初の目と最後の目が段差がない、きれいな円になります。
ただ、立ち上がりのくさりを編んで、段の最後に引き抜き編みをすることで、編み地の中の〝立ち上がり位置〟が目立ってしまう、という難点もあります。
そのため、作品デザインを考える上では、どこに立ち上がり位置がくるかを配慮したほうがよいケースもあります。
左の編み地のように、立ち上がりのくさりを編まずに編み進める場合は、その段の最初の目がどこなのかが分かりにくいため、段の最初の目にマーカーをつけるなどの注意が必要です。
また、段の最後で引き抜き編みをしませんので、段の切り替わり位置が分かりにくく、編み進めたあとで、何段編んだかを確認したりするためには、やはり何かしらの印をつけておいたほうがよさそうです。
立ち上がりのくさりを編まず、段の最後で引き抜き編みもしないで編むメリットとしては、段の変わり目(立ち上がり位置)がないため、きれいな編み地に仕上がるという点があげられます。
立ち上がり位置を実際の編み地で確認すると、下の画像で矢印の下にある、目立つ縦ラインがそれにあたります。
このように、こま編みの場合は、立ち上がりのくさりを編むかどうかを使い分けることも可能で、レシピによっては立ち上がりのくさりを編まない、ということもあり得ますので、そんなときにでも思い出してみてください。