こま編みの円のおはなし
かぎ針編みレシピに頻出の、こま編みの輪編み。
輪編みの中でも円を編むパターンは最もオーソドックスと言えます。
この最もオーソドックスなこま編みの「円」が、実はちょっと手ごわいのです。
編む円の大きさによって、そして編む人の手のきつさによっても、円の編み地の仕上がりが違ってきたりするからです。
さらに、円は分散増目といって、毎段数か所で目を増やしていくため、何目ずつ増やすかによって、円の広がり具合が変わることになります。
私がよく使うのは、毎段6目ずつ増やしていくパターン。
この目数が私の手にぴったりで、小さく編んでも大きく編んでも、平らで落ち着いた編み地に仕上がってくれます。
逆に、毎段8目ずつ増やすパターンだと、小さく編む分には割ときれいに仕上がっても、円が大きくなるにつれて編み地が広がりすぎてしまい、ギャザーのよったひらひらの円になってしまいます。
これは編む人の手によっても違うので、6目では円が平らにならず丸まってしまうという方もいるかもしれませんし、7目や8目がぴったりという方もいるかもしれません。
また、毎段増やす目数は、作りたい作品によって使い分けることもあります。
編み物は、何かと2つに分けること(バッグの持ち手とか)が多かったり、模様編みの単位が4目1模様とか、6目1模様とか偶数が多かったりもするので、私は偶数の目数を好んで使っています。
なので、7目(しかも素数!)となると、何かのときにデザイン上融通が利かないような気がして、つい避けてしまうのです。
こま編みの円と言えば簡単なイメージがあるのですが、追求するとけっこう深いなぁと思います。
円と六角形
先ほど、私は円を編むとき、毎段6目ずつ増やすことが多いと書きましたが、今度は〝どこで増やすのか〟という問題があります。
編み物と目数は切っても切り離せないので、円のように毎段変化のある編み方をしているときは、目数を数えることになります。
そのとき、法則性があると数が数えやすく、混乱や間違いも減らすことができます。
毎段6目増やす編み方を例にとると、まずは6目で作り目をして、そのあと毎段6目ずつ増やしていきます。
2段目はすべての目に2目ずつ編み入れて6目増やし、3段目は1目おきに2目ずつ編み入れて6目増やし、4段目は2目おき、5段目は3目おき・・・というのが、ここで言う法則性です。
この一番簡単な法則性で目を増やしていくと、六角形の編み地ができあがります。
でもやっぱり、もっとなめらかな「円」が編みたい!となると、目数を増やす位置(増目の位置)を少し工夫する必要が出てきます。
一定の法則性は維持しつつ、増目の位置を変える、そんな方法について、ここでご説明したいと思います。
編み地と編み図の違い
下の画像は、左が円、右が六角形になっているのが分かるでしょうか。
まだ小さな編み地なのであまりはっきりしないかもしれませんが、大きく編み進めるほど違いが顕著になってきます。
では、このような編み地のもとになった編み図を見ていきます。
下の左が円の編み図、右が六角形の編み図です。
右の六角形のほうは整然としていて、法則性がありそうなことはぱっと見でも分かります。
目数も数えやすい編み図になっています。
左の円の編み図はどうかというと、ぱっと見では分かりにくいかもしれませんが、実はこちらもちゃんと法則性があり、増目の位置がうまい具合に分散されています。
この2つの編み図の増目の位置を編み地に当てはめてみると、下の画像のような配置になります。
きれいな円を編むポイントは、この増目の位置にあります。
毎段の増目の位置が重ならず、互い違いにずれています。こうすることによって編み地に角ができにくく、なめらかな円に近づきます。
何となくイメージが湧くでしょうか?
円の増目の法則性
そして、下の編み図の解釈が、なめらかな円の増目の法則性になります。
よく見ていただくと、こちらは上で見た円の編み図と同じ編み図になっています。
言葉にするとややこしく感じるかもしれませんが、2目おき、4目おき、6目おき、といった偶数目おきに増目をする段では、増目の位置をずらして、1段おきに増目の位置を互い違いにする、ということです。
六角形ほどシンプルではないかもしれませんが、これできれいな円になると思えば、十分編みやすい法則性だと思います。
この法則性は、私の手にぴったりな毎段6目ずつ増やす円だけでなく、7目ずつ増やす円にも、8目ずつ増やす円にも共通しています。
なので、ぜひご自身の手にあった目数で、きれいな円を編んでみてくださいね。
円の編み方の一つとして、この法則性が参考になればと思います!