これまでの「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース」の続編として、新たに「バッグの基礎を固める かぎ針編み初心者コース」をスタートします。
今回のコースでは、オーソドックスな基本モチーフを通して、かぎ針編みの発展性が感じられるしくみのようなものをお伝えしていければと考えています。
なぜかというと、しくみが分かると作品を理解しやすくなって、編むのが楽になることがあるからです。
バッグを編む際に理解がはかどる内容にしていきますので、ぜひご参考になさってください。
説明に用いるモチーフは、モチーフつなぎ作品に登場するような、模様編みで透かしが入っていたり多色づかいで編んだりするモチーフではなく、かぎ針編みの基本的な編み方(こま編み、長編み、中長編み)だけで編むモチーフです。
読み物的な色合いが強くなるかもしれませんが、実際に編んでいただける関連作品もあわせてご紹介しますので、ぜひお付き合いください。
こちらの画像のレシピはページの一番最後に掲載しています。
Index -目次-
基本の丸モチーフとは?
円モチーフと楕円モチーフ
第1回となる「丸(円と楕円)」の今回は、〝丸モチーフ〟という大きなくくりの中に『円モチーフ』と『楕円モチーフ』という仲間がいる、という前提で解説を進めていきます。
丸モチーフの中でよりオーソドックスなのは、真円に近い形をした円モチーフではないでしょうか。
何かと用途が多い円モチーフは、ちまたのかぎ針編み作品の中でもしばしば発見することができます。
そして、丸く編んだ編み地をそのままコースターにしたりすることもありますね。
下の編み図は、円モチーフの例です。
このような円モチーフが作品の一部に使用される頻度はとても高いため、「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第4回]ふた付き小物入れ」でも、こちらの円モチーフを作品の一部として使用しました。
次に、丸モチーフのもう一つの仲間とした楕円形のモチーフ。
楕円モチーフは、編み図で見ると分かりやすいのですが、実は円モチーフを半分に割って、間に目数の増減なく編む部分を加えれば作ることができます。
下の編み図はその例です。
このように編み図を見比べてみると、円モチーフと楕円モチーフは仲間という感じがしてきませんか。
きっと、円モチーフを編んだことがあれば、楕円モチーフもとっつきやすいはず。
この2つの大きな違いは、円モチーフは輪の作り目で編みはじめ、楕円モチーフはくさりの作り目で編みはじめるところです。
初心者コースで楕円モチーフをご紹介するのはこれが初めてですが、実際は、くさりの作り目で編みはじめる楕円モチーフのほうが初心者さんにとっては編みやすいかもしれません。
このような関係にある円モチーフと楕円モチーフを、ここでは基本の丸モチーフとして解説していきます。
編み方の種類
こま編み編
先ほどご紹介した円モチーフと楕円モチーフの編み図は、どちらもこま編みを用いた丸モチーフを例にあげました。
こま編みは目が詰まっていて編み地が硬めに仕上がるので、中に綿を詰めるあみぐるみ作品や、強度がほしいバッグ作品などにぴったりです。
そのような作品の編み図の一部として、こま編みの丸モチーフが登場することがあります。
こま編みの円モチーフ
こま編みの円モチーフは、これまでの初心者コースで解説してきましたので、ここでの説明は省略することにします。
編み方の動画は「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第4回]ふた付き小物入れ」のページをご覧ください。
こま編みの楕円モチーフ(動画あり)
こま編みの楕円モチーフは、ここでもう一度編み図を載せて説明しますね。
この例では、くさり6目で作り目をして編みはじめています。
そこから立ち上がりのくさり1目を編み、作り目のくさりの6目めに針を入れて、最初のこま編みを編みます。
このとき分かりにくいのは、どこに針を入れて最初のこま編みを編むのか、という点です。
私のレシピでは、くさり目にどう編み入れるか迷いそうな箇所には「作り目のくさりの向こう側1本と裏山を拾って編みます」という解説を入れることがあります。
この編み図も同様のケースなのですが、先ほどの解説にもとづいて編むためには「くさりの向こう側1本」と「裏山」がどこをさしているのかが分からなくてはいけません。
この点は「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第3回]エコたわし」でも触れていたかもしれませんね。
まだご覧になっていない方に向けて、あらためて画像つきでご説明していきます。
事前情報として、くさりの目というのは3本の糸で構成されているということを頭の片隅に置いておいてください。
下の画像は作り目のくさりを6目編んだところで、くさりの表が見えています。
矢印でさしているところが「くさりの向こう側1本」です(例として、見やすそうな3目めのくさりを指しています)。
そして次の画像は、先ほどのくさりを手前に向かって倒した状態で、くさりの裏が見えています。
矢印でさしているところが「くさりの裏山」です(こちらも例として、見やすそうな3目めのくさりの裏山をさしています)。
作り目のくさりから目を拾う際は、これら2本を拾うように針を入れて編んでいますよ、ということを伝えようとしているのが「作り目のくさりの向こう側1本と裏山を拾って編みます」という先ほどの解説になります。
さて、このままでは、作り目のくさりの6目めに針を入れてこま編みを編むことはできません。が、ここから立ち上がりのくさり1目を編むので大丈夫です。
立ち上がりのくさり1目を編んで、作り目のくさりの6目めに針を入れて最初のこま編みをします(よって、針から2つ目のくさりの「向こう側1本」と「裏山」を拾って最初のこま編みを編むことになります)。
このとき、針はくさりの表から入れるようにしてくださいね。
最初のこま編みを編んだら、同じところに針を入れて、もう1目こま編みを編みます。
そして次のくさりに移り、こま編みを1目、また次のくさりにも1目・・・と最後のくさり(作り目のくさりの1目め)までこま編みを編みます。
最後のくさりには、こま編みをあと2目(合計で3目)編み入れます。これで、編み図左端のターンをしたことになります。
下の画像は、最後のくさりにこま編みを3目編み入れたところです。
次の目(青矢印)からは、ターンしたあとの後半戦です。
前半戦では「作り目のくさりの向こう側1本と裏山を拾って」こま編みを編んできました。
そういえば、くさりは全部で3本の糸でできているのでしたよね。
前半戦では2本拾って編んできましたから、拾わなかった1本が存在します。その1本を拾って編んでいくのが後半戦になります。
実際の操作としては、矢印がさしている1本を拾って、後半戦最初のこま編みを編みます。
そして次の1本にこま編み1目、その次にも1目・・・とつづけます。
一番左端の目には、前半戦で、この段の最初のこま編みとその次のこま編み(合わせて2つのこま編み)が編み入れられています。そこに後半戦のこま編みを1目編み入れたら、この段のこま編みは終了です。
最初のこま編みの目に針を入れて引き抜き編みをして、1段目が完了となります。
下の画像は、引き抜き編みが終わったところです。
楕円の編み方、イメージが湧いたでしょうか。
くさりからどうやって目を拾って編むかが分かれば、問題なく編めてしまいそうですよね。
これ以降の楕円モチーフも、作り目のくさりから目を拾う方法は、前半戦・後半戦とも同じ要領で編みます。
両脇のくさりに編み入れる目数が変わったりすることはありますが、ここまで説明してきた方法に準じて編めばOKです!
全体を通した編み方については、動画解説をご用意しましたのでご参考になさってください。
長編み編
次は、長編みの丸モチーフです。
長編みの目は、こま編み3目分の高さが目安になると言われますので、こま編みに比べて円が大きくなっていくスピードも速いです。
そして、長編みの編み地はこま編みよりも薄手なので、こういった性質の違いにより、用いられるシーンも変わってきます。
長編みの円モチーフ(動画あり)
長編みの円モチーフは、「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第1回]コースター」でも類似の編み方を解説しており、こちらはくさりを輪にした作り目で編みはじめるパターンになっています。
今回は、輪の作り目で編みはじめる長編みの円モチーフをご紹介します。
違いとしては、輪の作り目で編みはじめると中心がぴしっと引き締まってきれいな反面、初めての方は糸の持ち方や力加減が慣れなくてちょっと編みにくいかもしれない、という点があります。
「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第4回]ふた付き小物入れ」「定番小物からはじめる かぎ針編み初心者コース[第5回]基本のマルシェバッグ」を終えた方であれば、輪の作り目は経験ずみですね。
これらのコースには編み方動画もあるので、ここでは輪の作り目の解説は割愛して先に進むことにします。
下の編み図は長編みの円モチーフの例です。
こま編みの例では1段目で編む目数が6目でしたが、こちらは16目と、長編みモチーフのほうが作り目の数が多くなっています。
こま編みよりも長編みのほうが目の高さがあるので、1段目の円周も長めだからですね。
円周が長い分、目数も多くしないと編み地が平らに広がりません。
であれば、こま編みの3倍の18目になるべきじゃないの?と、16目であることが気持ち悪く感じた方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、3倍というのはあくまで〝目安〟ですから、18目もしかり、目安ととらえれば目をつぶっていただけるのではないでしょうか。
このへんあまり気にならない私としては、編んでみてちょうど円の編み地が平らに落ち着く15~16目くらいをよく使います。
ということで、ここでは16目ベースの編み図をご紹介しています。
長編みというのはとても編みやすい編み方だと思うのですが、こちらの円モチーフも、輪の作り目さえできれば、その他は特に解説がいらなそうです。
1つコツをお伝えするとすれば、段の最後に立ち上がりのくさりの3目めに針を入れて引き抜き編みをするときの編み方です。
このとき、くさりの表から針を入れるのですが、3目めのくさりの右の1本と裏山を拾うようにして引き抜き編みをすると、立ち上がりのくさりが目立たなくてきれいに見えるのでおすすめです。
そして、長編みの円モチーフ全体として編みやすいポイントがあります。
それは毎段の増目の位置です。
こま編みの場合、毎段同じ位置で増目を繰り返すと、段数が増えるほど六角形のような角のある形になってしまうのですが、長編みの場合、そのような心配があまりありません。
なので毎段同じ箇所で増目をしてもOK!
このほうが目数も数えやすいですから、実際編んでみると、増目のテンポがいいということの優秀さを実感できるのではないでしょうか。
長編みの円モチーフの編み方については動画解説をご用意しましたので、こちらもご参考になさってください。
長編みの楕円モチーフ(動画あり)
さて次は、長編みの楕円モチーフを見てみましょう。
長編みの楕円モチーフしくみも、こま編みと同じように考えるとスムーズです。
こちらも編み図で見ると分かりやすいのですが、円モチーフを半分に割って、間に目数の増減なく編む部分を加えると楕円モチーフにすることができます。
下の編み図はその例です。
先ほどは、円モチーフ1段目の長編みの数が16目でしたね。
それをもとにした楕円モチーフの場合、両端に長編みが8目ずつ。その間に目数の増減のない目が入っています。
編み方は、こま編みの楕円モチーフのところで説明した要領と同じなので、こま編みが長編み変わったと考えて編めばOKです。
ここまでくると、円モチーフや楕円モチーフがどのような仕組みでできているか、かなり理解が深まってきたのではないでしょうか。
こちらの編み方についても動画解説をご用意しましたので、ご参考になさってください。
中長編み編
次は、こま編みと長編みの中間的存在の中長編みの丸モチーフです。
長編みの目の高さは、こま編みの3倍でしたが、中長編みは2倍が目安と言われています。
立ち上がりのくさりも、こま編みは1目、長編みは3目なのに対し、中長編みは2目になります。
このあたりも中間的ですね。
中長編みは編み地に厚みが出るところが特徴的で、こま編みのような硬さのある厚みではなく、もう少しふわっとした弾力のある感触に仕上がります。
中長編みの目の頭は右側にずれているため、輪編みすると次の段の目の位置がずれ、作品によってはその斜行が気になることがありますが、往復編みをすると横筋を出すことができるのも中長編みの特長で、編み地のテクスチャーが面白くなるという良さがあったりもします。
そういった隠れたクセを活かすことで、中長編みでしか表現できない素敵な作品が出来上がることがありますので、ぜひ中長編みにもトライしてみてほしいです。
中長編みの円モチーフ(動画あり)
下の編み図は中長編みの円モチーフの例です。
1段目の目数は、こま編みの円モチーフが6目だったのに対し、中長編みはその2倍の12目になっています(こちらの数字はスッキリ!)。
こちらの編み図では、こま編みのように、毎段の増目の位置が互い違いになるように配置しています。
この点は作品によって様々なのでご参考まで。
中長編みの目のどこに針を入れて次の段を編むか、などの実際の編み方については動画をご覧いただくのが分かりやすいかもしれません。
中長編みの編み方にフォーカスした動画は「中長編み [half double crochet (hdc)]」にあります。
初心者コースに中長編みが登場するのは初めてなので、円モチーフ・楕円モチーフともに動画解説をご用意しています。
中長編みの楕円モチーフ(動画あり)
次の編み図が、中長編みの楕円モチーフになります。
中長編みの楕円モチーフも、円モチーフを半分に割って、間に増目のない箇所を入れた形になっています。
中長編みだから特に解説が必要という箇所はなさそうかなと思いますので、実際の編み方を動画でご覧いただき、どこが前段の中長編みの目なのか、どこに針を入れて編めばいいか、といったあたりを、必要に応じて確認してみてください。
丸モチーフを使った作品
円モチーフ
円モチーフが登場する頻度はかなり高めです。
丸底バッグやあみぐるみ、コースター、水玉模様の飾り付けなど、数えるとキリがなさそうです。
ぱっと見では気づかないような作品でも、実は“円モチーフで編みはじめてから・・・”というパターンもあります。
当サイトの無料レシピの中にも、円モチーフから編みはじめる作品がありますので、ぜひのぞいてみてください。
楕円モチーフ
楕円モチーフが活用される際に、円モチーフと大きく違うところは、楕円の縦横のバランスを変えられるという点です。この点はバッグを編む際に大変融通がきいて、デザインの幅を広げてくれます。
もちろん楕円モチーフも、バッグ以外にもいろいろな作品に登場します。
楕円の形だけで様になってしまうので、ランチマットなんかにもかわいいですね。
以下、当サイトの無料レシピをご紹介します。
これら、かなり前に作った編み図で、バッグ底の編み図の描き方が長方形のように見えてしまいますが、よく見ていただくと楕円モチーフと同じ編み方になっています。
楕円モチーフの実践レシピ「オムレツパース」
楕円モチーフを初心者コースで扱うのは初めてなので、新しいレシピを1つ作りました!
タイトル画像にもあるオムレツ型のパースです。
あえて動画なしの実践レシピですが、モチーフの活用で作ることができる作品なので、ぜひトライしてみてください!
かぎ針の号数・材料
メルヘンアート マニラヘンプヤーン(20g玉 約50m)・・・10g
サンプル作品:ラピス(517)、ストロー(507)を使用
針・・・7号かぎ針
ファスナー / YKK フラットニット(R)(20cm)・・・ 1本
サンプル作品:緑(#540)、黒(#580)を使用
ファスナー縫いつけ用の針と糸・・・適宜
ファスナーは、編み地に合わせてカットして使うので、金属タイプではなく、カットできるナイロンファスナーをご用意ください。
できあがりサイズ
縦6cm × 横11.5cm × マチ3cm
ゲージ
2cm平方で、縦3目 × 横3目
編み図
作り方
作り方説明とあわせて編み図もご確認ください。
①くさり6目で作り目をして、バッグ本体から編みはじめます。
作り目のくさりに編むこま編み(前半)はくさりの向こう側1本と裏山を拾って編み、後半は前半で拾わなかった1本を拾って編みます。
毎段、両端で増目をしながら編み、8段目を編み終えたら糸を切ります。
②次に、マチを編みます。
マチはくさりの作り目で編みはじめ、くさり52目を編んだら、くさりがねじれないよう注意しながら、最初の目に引き抜いて輪にします。
作り目のくさりに編み入れるこま編みは、くさりの向こう側1本と裏山を拾って編みます。
マチを編み終えたら、その糸でつづけて引き抜きはぎをするので、まだ糸は切りません。
③2つの編み地をアイロン台にピン打ちして、スチームアイロンを(蒸気だけを当てるように)浮かせてかけ、編み地を落ち着かせます。
④マチにファスナーを縫いつけます。
ファスナーの下止(ファスナーがそれ以上開かないように付けてあるストッパー)が、マチの立ち上がり位置側にくるようにファスナーを配置して、マチの編み地に縫いつけます。
このとき、編み地をできるだけ湾曲させず、平らな状態で縫いつけるよう意識してみてください。はぎ合わせたとききれいに仕上がります。
縫いつけが完了したら、ファスナーの余った部分を切り落とすのですが、そうすると下止がなくなってしまいます。
なので必ず、切り落とす前に、“本来なら下止を付けておきたい位置”はこのあたりかな、と見当をつけて、糸が下止の代わりになるよう、その位置を何度も縫いとめておいてください。
これで、ファスナーが開き切ってスライダーが抜けてしまう、という事態を防げます。
④編み図に示した対になる位置(マチと本体をつなぐ点線矢印)の目を合わせて、本体とマチを“外表”に重ねます。
重ねた編み地は、マチが手前に見えていて、本体が向こう側になるように手に持ってください。
マチと本体の最終段の目を合わせ、引き抜きはぎの編みはじめ位置から、重なった目の内側の1本ずつ(マチの目の向こう側1本と、本体の目のこちら側1本)を拾って引き抜き編み(引き抜きはぎ)をしていきます。
1周したら糸を切ります。
[参考]かぎ針編みのとじ・はぎ のページに、半目の引き抜きはぎのしかたの動画解説と画像解説があります。
⑤お好みで、引手の穴に飾り付けをしたら完成です。